2012年5月14日月曜日

ガーラと目が合った

                               自宅近くのデイゴ

4月22日の事である。4月の釣果にも載せているが、その日は早朝にガーラを1匹あげ、夕方もガーラタイムに合わせ釣り仲間のKさんと出かけた。その時間は潮も引いているし、ミジュンの動きからすると沖目のテトラポットでガーラを待つのが良いと判断し、時間まで待機していた。しばらくすると予想通りガーラが暴れだした。kさんは1匹は逃がしたものの、もう1匹を釣り上げた。私もテトラの沖側でヒットしたが、ギャフや玉網も持っていないし、テトラの上なので取り込みが難しい。そこで時間をかけて弱らせてから取り込むことにし、ラインをいつもよりゆっくりと巻きながらタイミングを計っていた。その日の潮は干潮近くで浅くなっており、海も透き通っていたのでガーラの泳いでいるのがはっきりと見えた。そして少しずつ引きが弱くなってきているのも竿先から伝わってきた。そろそろである。私もテトラの下の方に降り右に左にいなしながらタイミングを待っていた。その時左側に逃げようとしていたガーラが,ラインに引っ張られ右側に方向を変え丁度私の正面に来た。3m程の距離である。海面から数cmのところで銀色の魚体が手に取るように見えた。その時である。斜めに体を倒しながら泳いでいるガーラが目玉を動かし私を見つめた。はっきりと私を見た。ほんの数秒だったとは思うが私とガーラは互いに目を合わせていた。その瞬間私は何とも表現しがたい気持ちに襲われた。ガーラが魚ではなく、人間の子供の様な、家族同様に生活しているペットの様な、ものすごく愛しい生き物に感じた。「助けて、ヒー、助けて、助けて」と叫んでいるように見えた。本当にそう思えた。私は戸惑ってしまった。どうすればいい・・・・・・・・・・・
「手伝おうか」Kさんの高い声が後ろから聞こえてきた。我に返った。少し海アッチャーとしての気持ちが戻ってきた。そしていつもの手順で手元まで寄せ、リーダーを握り抜き上げた。きっちりフッキングしていたしリーダーもフロロカーボンの12号である。全然問題は無い。持った感じは3㎏程の重さであった。目は見ないようにした。そしてリーダーを握り返しテトラを登ろうとしたそのとき、突然ガーラが視界から消え去り、手から重みが無くなった。一瞬何が起きたか解らなかった。ドボン!!。下のほうで音がした。ルアーを喰えたままのガーラがテトラの間でしばらくお腹を上に浮いていた。しかしすぐに隙間に消えていった。上の方でKさんが何か言っていたが良く聞こえなかった。とりあえずテトラの上まで登り、腰を下ろした。よくみるとスナップが開いていた。当然ルアーも無くなっていた。初めての経験である。このスナップは一番強いと言われておりまさかと思ったのだが、後でばねが弱っていた事が解った。要するに使用頻度が多いのにも関わらず、面倒くさがって変えていなかったのである。海アッチャーとしてはあるまじき事である。
しかし・・・・・・・・・・・・
私はまったく悔しくなかった。そばでKさんが慰めの言葉やこうすればよかったとか色々話しているのだが、私の耳にはまったく入らなかった。失敗して良かった。

あの時のガーラの目はしばらく忘れられなかった。何度か自問自答した。「あのガーラもミジュンを食べるとき、ミジュンの目を見てかわいそうだから逃がそう」なんて思わないだろう、などと。

あれからしばらく経っているが相変わらずガーラを釣っている。もうあのときの感情はかなり薄れているのだが、釣りに対する自問自答は続いており、なかなか答えが見つからない。

ところであのガーラは、まだルアーをぶら下げたままミジュンを追っているのだろうか。
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